「共感力を育てたい」と思ったとき、
やさしくする力や思いやりのある行動をイメージする方は多いのではないでしょうか。
しかし、非認知能力としての共感力は、
すぐに行動として表れるものではありません。
3歳頃の子どもにとって大切なのは、
- 自分の気持ちに気づく
- 自分と相手が違う存在だと知る
- 相手の表情や様子に気がつく
といった、「知る・気づく力」の土台です。
特に3歳の双子は、日常の中で常に身近に相手がいるため、
泣いている・怒っている・困っているといった感情を
自然と“観察する環境”が整いやすいと感じています。
この記事では、
3歳の双子の実例をもとに、
共感力とは何か、そして家庭でどんな環境を意識すればよいのかを
非認知能力の視点からわかりやすく解説します。
「まだ早いのでは?」と感じている方にも、
今できる関わり方が見えてくる内容です。
共感力とは「優しくする力」ではない
「共感力が高い子」と聞くと、
・お友だちに優しくできる
・譲ったり、助けたりできる
そんな姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、非認知能力としての共感力は、
実はそうした「行動」そのものを指しているわけではありません。
共感力=行動ではない
共感力は、
「泣いている子に声をかけられる」
「おもちゃを譲れる」
といった目に見える行動の前段階にある力です。
まだ3歳の子どもにとって、
相手の気持ちを完全に理解し、適切に行動することは簡単ではありません。
それでも共感力は、すでに育ち始めています。
大切なのは、
「どう行動したか」よりも
**「相手の存在や感情に気づいているか」**という点です。
解決する・譲る・助ける、とは別物
「共感=解決すること」
「共感=我慢して譲ること」
と考えてしまうと、子どもにとっては少し難しくなってしまいます。
本来の共感力は、
相手の気持ちを“なんとかしてあげる”力ではなく、
「相手は今、どんな気持ちだろう?」と感じ取る力です。
たとえ行動に移せなくても、
相手をじっと見ている、表情の変化に気づく、
そんな姿も共感力の大切な芽だと言えます。
共感力は「気づこうとする姿勢」
非認知能力としての共感力は、
相手の感情に関心を向ける姿勢そのものです。
・泣いている理由はわからなくても、気になる
・怒っていることに気づく
・自分と同じではないと感じる
こうした積み重ねが、
やがて「考える」「想像する」「折り合いをつける」力へとつながっていきます。
双子の場合、日常の中で
相手の反応や感情の変化を目にする機会が多く、
自然とこの「気づこうとする姿勢」が育ちやすい環境にあります。
次の章では、
共感力がどのような段階を経て育っていくのかを、
3歳の発達段階に沿って整理していきます。
3歳の共感力は「分かる」より「気づく」が先
3歳頃の子どもは、
相手の気持ちを言葉で理解したり、
「どうしてそう思ったのか」を考えられる段階ではありません。
この時期に育っているのは、
**相手の気持ちを“分かる力”ではなく、“気づく力”**です。
たとえば、
- 友だちが泣いている
- いつもと声のトーンが違う
- その場の空気が少し変わった
こうした 表情・行動・雰囲気の変化に反応すること が、
3歳の共感力の入り口です。
また、この頃の子どもは、
「自分」と「相手」が同じ存在ではない、
という感覚にも少しずつ気づき始めます。
- 自分は平気だけど、相手は嫌そう
- 自分はやりたいけれど、相手は困っている
こうしたズレを感じる経験が、
のちに「相手の気持ちを考える力」へとつながっていきます。
そのため、
3歳の段階で「優しくできない」「譲れない」ことがあっても、
共感力が育っていないわけではありません。
共感力が育つまでのステップ【3歳頃の発達】
共感力は、ある日突然「身につく力」ではありません。
特に3歳頃の共感力は、気づいたり・戻ったり・立ち止まったりを繰り返しながら育つ力です。
そのため
「昨日できたのに今日はできない」
「片方はできるのに、もう片方はできない」
という状態は、発達としてとても自然なことです。
ここでは、3歳前後までに見られやすい共感力の育ちを10のステップとして整理しました。
※すべての子が順番通りに進むわけではなく、行き来しながら少しずつ積み重なっていきます。

共感力が育つ10ステップ(3歳頃までのイメージ)
① 泣くのみ(生まれたて)
不快・安心といった感覚を「泣く」ことで表現する段階。
まだ自分と他人の区別はありません。
② 相手の行動を模倣する
周りの大人やきょうだいの行動を、意味は分からなくても真似します。
これは社会性の土台になります。
③ 自我が目覚める
「自分」という存在を感じ始めます。
イヤイヤ期に入るのも、この発達の一部です。
④ 相手の行動を見る
自分以外の人の動きや反応に、少しずつ意識が向くようになります。
⑤ 相手が思い通りにならないと知る
「自分と相手は同じではない」
「相手は自分の思い通りには動かない」
というズレに気づく段階です。
⑥ 相手の気持ちに“気づく”
泣いている、怒っている、困っているなど
表情・行動・雰囲気から相手の状態に反応し始めます。
※3歳の「気づく」は、
感情を理解するというより“感じ取る”レベルです。
⑦ 自分の気持ちと相手の気持ちの差を感じる
「自分はこうしたいけど、相手は違う」
という違和感を持てるようになります。
⑧ 相手の気持ちを考えようとする姿勢が見え始める
必ずしも行動に移せなくても、
立ち止まる・様子を見るといった反応が出てきます。
⑨ さらに違う人の気持ちにも出会う
家族以外の人、友だち、大人など
さまざまな考え方・反応に触れることで、視野が広がっていきます。
⑩ 色々な考え方に触れ、共感力が少しずつ深まる
「正解」を覚えるのではなく、
人それぞれ感じ方が違うことを体験として蓄えていきます。
3歳の共感力は「完成」を目指さなくていい
このステップを見て分かる通り、
共感力は一直線に伸びる能力ではありません。
行ったり来たりしながら、
「気づく経験」を積み重ねていくことが、3歳頃の育ちです。
そのため、
- すぐに優しくできない
- 分かっているようで分かっていない
- 双子で差が出る
これらは、どれも発達の途中にある自然な姿です。
大切なのは
「正しい行動をさせること」ではなく、
気づく機会が日常の中にあること。
次のパートでは、
双子育児だからこそ生まれやすい
「共感力が育つ環境」について、具体例とともに見ていきます。
双子育児だから見えた「観察する時間」
双子は、一人で遊んでいても
常に視界のどこかに「もう一人」がいる環境です。
相手が泣いている、機嫌が悪そう、何かに夢中になっている。
そうした変化を、大人が言葉で説明しなくても自然と目にしています。
これは「優しくする」「助ける」といった行動以前の、
相手の存在や状態に気づく経験の積み重ねだと感じています。
泣いている相手を「見る」という行動
双子の一人が泣いているとき、
もう一人が必ずしも近づいたり、声をかけたりするとは限りません。
我が家では、
楓が泣いているとき、月が少し離れた場所から
じっと様子を見ている場面がよくあります。
そのとき月(息子)は、
「ママ」と抱っこを求めるわけでもなく、
無理に関わろうとすることもありません。
時には、パパの方へ行き、少し距離を取る選択をすることもあります。
一見すると、
何もしていないようにも見えます。
けれど私は、この「見ている時間」そのものが、
共感力の芽だと感じています。
相手が泣いていることに気づき、
状況を観察し、どう関わるかを自分なりに考えている。
行動に移さなくても、
相手の存在や状態を感じ取っていることには変わりありません。
「何もしない=共感力がない」ではなく、
関わらないという選択も、共感の一つの形だと思うようになりました。
「分かっているから折れる」娘の反応
楓(娘)は、感情の起伏が大きい一方で、
相手の状態をよく見ていると感じる場面があります。
例えば、毎晩のように続いていた
「お風呂に入らない」という攻防。
その日はどうしても入れず、
「明日の朝に入ろう」と約束して終えました。
すると翌朝、保育園の準備で慌ただしい中でも、
娘は驚くほどすんなりお風呂に入ったのです。
ここで感じたのは、
単にわがままが通った・通らなかった、ではありません。
• 今は親が本気で急いでいること
• ここでは折れた方がいい場面であること
• 相手(親)の余裕や状況
そうしたものを、娘なりに感じ取っていたのだと思います。
相手の感情や立場を
言葉で説明されたわけではなくても、
「分かっているから折れる」という反応が見られました。
これもまた、
相手の状態に気づき、認識する力。
3歳なりの共感力の表れだと感じています。
共感力は「何をしたか」では測れない
泣いている相手に近づくこと、
声をかけること、
譲ったり助けたりすること。
私たちはつい、
こうした分かりやすい行動で
共感力を判断してしまいがちです。
けれど、3歳頃の共感力は、
まだ「行動」として完成していなくても問題ありません。
• 相手が泣いていることに気づく
• その様子をじっと観察する
• 今はどうするべきかを感じ取る
• 相手の状況を察して折れる
こうした内側で起きている認識の積み重ねこそが、
共感力の土台になっていきます。
何もしなかったように見える場面も、
その子なりに「感じて」「考えて」いる時間かもしれません。
だからこそ、
共感力は「優しくできたかどうか」ではなく、
気づけているかどうかという視点で見ていきたい。
双子育児の中で見えてきたのは、
共感力は教え込むものではなく、
日常の中ですでに芽を出している力だということでした。
共感力は「教えるもの」ではなく「環境で育つ」
共感力について考えると、
つい「どう教えればいいのか」「何を声かけすればいいのか」と
方法を探したくなるかもしれません。
けれど、ここまで見てきたように、
共感力は「教え込んで身につく力」ではありません。
こうすれば育つ、とは言えない
「この声かけをすれば共感力が育つ」
「この関わりをすれば優しい子になる」
残念ながら、
共感力にそんな即効性のある正解はありません。
なぜなら、共感力は
行動ではなく、内側の気づきや認識だからです。
見えにくく、測れず、
本人の中で静かに積み重なっていくものです。
でも、育ちやすい環境はある
一方で、
共感力が育ちやすい環境は確かにあります。
それは、
- 人の気持ちが行き交っている日常
- 喜びや不満、泣く・怒るといった感情が自然に見える環境
- それを大人が過度に整理しすぎない空間
双子育児は、意図せずして
こうした環境が日常の中に組み込まれています。
だからこそ、
「何かを教えなければ」と構えなくても、
共感力の芽はすでに育ち始めているのです。
大人が説明しすぎないことの意味
親としてつい、
「今は○○ちゃんが悲しいんだよ」
「こういうときは、こうしてあげるんだよ」
と説明したくなることもあります。
もちろん、言葉にすることが助けになる場面もあります。
ただ、毎回説明しすぎる必要はありません。
• 見ている
• 感じている
• 考えている
その時間を、子どもから奪わないことも
大切な関わり方のひとつです。
共感力は、
大人が引き出すものではなく、
子ども自身が気づいていく力だからです。
3歳の共感力は「芽が出ていれば十分」
共感力は、
3歳で完成するものではありません。
今はまだ、
- 相手を見ているだけ
- 何もせず、距離を取っている
- 表情や空気を感じ取っている段階
そうした目に見えにくい反応が多い時期です。
だからこそ、
「優しくしないから共感力が育っていない」
「何も行動しないから分かっていない」
と判断する必要はありません。
完成形を目指さなくていい
共感力は、
早く身につけるほど良い力ではありません。
気づく → 感じる → 考える → 行動する
この順番を、その子のペースで辿っていく力です。
今はまだ、
最初の「気づく」が育ち始めていれば十分。
芽が出ているなら、
それはもう、ちゃんと育ち始めています。
反応がなくても、何も育っていないわけではない
泣いている相手を見ても、
声をかけない、近づかない。
そんな姿を見ると、
少し不安になることもあるかもしれません。
けれど、反応がないように見えても、
- 見ている
- 感じ取っている
- 自分なりに処理している
その内側の動きは、
外からは簡単に見えません。
共感力は、
「分かりやすい行動」よりも先に、内側で育つ力です。
見えないところで、積み重なっている
毎日の中で、
- 相手の存在に気づく
- 空気の変化を感じる
- 自分と相手は違うと知る
そんな小さな経験が、
少しずつ、確実に積み重なっています。
大人ができるのは、
それを急がせないこと。
評価しすぎないこと。
そして、
「もう芽は出ている」と信じて見守ることです。
まとめ|共感力は、アウトプットでは測れない
共感力は、
「優しくできたか」「助けられたか」といった
アウトプットだけでは測れません。
その土台にあるのは、
日常の中での「気づき」の積み重ねです。
双子育児の毎日は、
大変なことも多い一方で、
- 人の感情が身近にある
- 相手を観察する時間が自然と生まれる
- 共感力の芽が見えやすい環境でもあります
育てようとしすぎなくても大丈夫。
すでに、日常の中で始まっています。
まずは、
「今どんな芽が出ているか」
そこに目を向けるところからで十分です。
共感力は、非認知能力の中でも「他者と関わる力」の一つです。
非認知能力全体を整理した親記事では、双子育児の中で意識しやすい視点をまとめています。

