「上の子+双子」の家庭は、大学無償化の制度によって
**教育費が大きく下がるのでは?**と期待されやすい世帯構成です。
しかし実際には、
「3人いるのに全員が対象にならない年が多い」
「思っていたほど安くならない」
と感じるケースも少なくありません。
その理由は、大学無償化が
「人数」ではなく「扶養人数」で判定され、
さらに進学時期の重なり方が大きく影響する制度だからです。
この記事では、
上の子(2歳上)+双子というモデルケースをもとに、
いつ・誰が無償化の対象になるのか、
制度あり・なしで大学費用はいくら変わるのかを
年表・図解・金額シミュレーションで冷静に整理します。
「上の子+双子世帯は、実際どのくらい教育費が軽くなるのか?」
その“現実”を知りたい方に向けた記事です。
この記事で分かること
本記事では、「上の子+双子」という世帯構成において、
大学無償化がいつ・どこまで適用されるのかを、具体的な条件と金額で整理します。
上の子+双子世帯が無償化の対象になる「期間」
大学無償化は、在学している人数ではなく、
その年の扶養人数を基準に判定されます。
そのため、上の子・双子それぞれが
どの学年で在学しているかによって、
対象になる年・ならない年がはっきり分かれます。
この記事では、
「どの学年で」「誰が」対象になるのかを
年表と図解で確認できるようにしています。
なぜ「全員が対象」にならないのか
「3人とも大学生の年がある=全員無償化」
と誤解されがちですが、実際にはそうならないケースが多くあります。
その理由は、
- 扶養から外れるタイミング
- 年齢差による在学期間のズレ
- 制度が年度ごとに判定される点
といった制度上の仕組みにあります。
この記事では、「なぜ期待どおりにならないのか」を
感覚論ではなく制度ベースで解説します。
金額シミュレーションで見る「期待との差」
さらに、
制度を使わなかった場合と
大学無償化を利用した場合を比較し、
3人分の大学費用がいくら変わるのかをシミュレーションします。
「安くはなるが、想像していたほどではない」
その理由が、金額を並べることで自然と見えてくる構成です。
前提条件|今回のシミュレーション設定

本記事では、
上の子+双子世帯における大学無償化の影響をできるだけ具体的に示すため、
あらかじめ条件を固定したモデルケースを設定し、
金額シミュレーションを行っています。
条件を最初に明示しておくことで、
途中で前提がぶれず、
「結局いくら変わるのか」が把握しやすくなります。
家族構成
・上の子+双子の3人きょうだい
・年齢差:上の子と双子は 2歳差
進学先(モデルケース)
・上の子:私立大学(文系)
・双子①:私立大学(文系)
・双子②:私立大学(理系)
※ 学部構成は一例であり、実際の学費は大学・学部により異なります。
令和7年度から、子供3人以上の世帯への大学等の授業料等の無償化を拡充します!
( 「高等教育の修学支援新制度」の拡充)
※ 本制度は「在学人数」ではなく、
その年度の扶養人数を基準に判定されます。
令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等
平均額(定員1人当たり)の調査結果について
本シミュレーションで使用している学費は、
文部科学省が公表している私立大学の平均的な学費データをもとにしています。
個別の大学の実額ではなく、
あくまで「全国平均を使った目安」である点をご理解ください。
上の子+双子世帯はなぜ「誤解されやすい」のか
上の子+双子世帯は、
きょうだいが3人いるにもかかわらず、大学無償化の恩恵を最大限に受けられない
ケースが多く見られます。
その背景には、制度への分かりにくさと、
家族構成ならではの“時間差”があります。
「3人いる=ずっと対象」という思い込み
多子世帯の大学無償化は、
「子どもが3人いれば自動的に全員が対象になる」
と誤解されがちです。
しかし実際には、
その年度に扶養されている子どもの人数が基準となるため、
常に3人分の支援が受けられるわけではありません。
特に上の子がいる世帯では、
進学・卒業のタイミングによって
支援対象から外れる年が生じやすくなります。
年齢差によって扶養人数が揃わない構造
上の子と双子の年齢差がある場合、
- 上の子がすでに卒業している
- 双子はまだ大学在学中
- あるいはその逆
といった状態が生まれやすく、
「大学生が3人在籍する期間」が非常に短い、
もしくは存在しないケースもあります。
その結果、
多子世帯の条件を満たす年が限定的になり、
期待していたほどの無償化が受けられないと感じやすくなります。
双子+下の子世帯との決定的な違い
双子+下の子世帯では、
下の子が扶養に残っている期間に
双子が同時進学するため、
扶養3人が揃いやすい構造があります。
一方、上の子+双子世帯では、
上の子が先に卒業・就職することで、
扶養人数が2人に戻ってしまう期間が発生しやすいのが大きな違いです。
この「時間構造の差」が、
無償化の恩恵に大きく影響します。
年表で見る|上の子+双子の大学在学と扶養人数

ここでは、
上の子が2歳年上のケースを例に、
大学在学状況と扶養人数の推移を年表で整理します。
図解とあわせて見ることで、
「いつ・誰が対象になるのか」が直感的に分かります。
上の子が大学生の期間
上の子が大学に在学している時点では、
双子はまだ高校生〜浪人前の年齢にあたります。
この期間の扶養状況は、
- 扶養人数:3人
- 大学在学者:上の子のみ
となり、
多子世帯ではあるものの、大学無償化の恩恵は限定的です。
双子が同時に進学する期間
双子が大学に同時進学するタイミングで、
一時的に
- 上の子:大学在学中
- 双子2人:大学在学中
という状態が重なります。
この期間は、
- 扶養人数:3人
- 大学在学者:3人
となり、
**3人全員が支援対象になり得る「短い期間」**が生まれます。
ただし、この期間は長く続かない点が重要です。
支援対象になる年・ならない年
上の子が卒業・就職すると、
扶養から外れる可能性が高くなり、
その年度以降は
- 扶養人数:2人
- 大学在学者:双子のみ
という状態に戻ります。
この結果、
- 無償化の対象になる年
- 対象外になる年
が混在し、
「思っていたより支援を受けられなかった」
という印象につながりやすくなります。
この年表から分かるポイント
先ほどの年表を見ると、
上の子+双子世帯が大学無償化において
**「誤解されやすい理由」**がはっきり見えてきます。
ここでは、特に重要な3点に絞って整理します。
全員が対象になるのは「ごく短期間」
上の子+双子世帯で、
3人全員が同時に大学無償化の対象になる期間は、
実はかなり限られています。
それは、
- 上の子が大学在学中
- 双子が同時に大学へ進学している
この条件が重なる、ほんの数年間だけです。
制度上は「3人世帯」でも、
3人分の支援がフルに適用される年は少ない
という点が、この世帯の大きな特徴です。
上の子は対象外になる年が多い
上の子は、
- 双子より先に進学し
- 双子より先に卒業・就職する
という流れになりやすいため、
大学無償化の対象にならない年が比較的多くなります。
特に、卒業後に扶養から外れた場合は、
その年度以降、上の子は支援対象外となります。
その結果、
「3人いるのに、実際は2人分しか軽減されていない」
と感じるケースが生まれやすくなります。
年齢差が2歳でも油断できない理由
「年齢差が2歳なら、大学期間がかなり重なるのでは?」
と思われがちですが、実際にはそう単純ではありません。
- 進学・卒業のタイミング
- 就職時期
- 扶養から外れる年
これらが少しずれるだけで、
無償化の対象年数は想像以上に短くなる可能性があります。
年齢差が小さくても、
「自動的に長期間支援されるわけではない」
という点は、事前に知っておきたい重要ポイントです。
無償化がない場合の大学費用|3人分の合計はいくら?
ここからは、
制度を使わなかった場合、教育費がいくらかかるのかを
まず整理します。
無償化による軽減額を正しく理解するためには、
「支援がなかった場合の金額」を把握しておくことが欠かせません。
今回のモデルケース(おさらい)
- 上の子:私立大学(文系)
- 双子①:私立大学(文系)
- 双子②:私立大学(理系)
※ 学費は文部科学省公表の私立大学平均額をもとに算出しています。
無償化なしでかかる大学費用の目安
この条件で、
3人がそれぞれ4年間私立大学に通った場合の
大学費用の目安は以下の通りです。
3人分合計:約 13,630,000円
これは、
入学金・授業料・施設費などを含めた
あくまで平均的なモデルケースですが、
制度の有無による差を考える際の基準になります。
大学費用シミュレーション|無償化でいくら軽くなる?
の場合.png)
ここからは、
多子世帯の大学無償化を利用した場合、
実際にどの程度、大学費用が軽くなるのかを
金額シミュレーションで確認します。
無償化が適用される人数と期間
上の子+双子(年齢差2歳)のケースでは、
3人全員が同時に支援対象となる期間は限定的です。
- 上の子が大学在学中
- 双子が同時に大学へ進学したタイミング
この条件が重なる年のみ、
3人分の支援が適用されます。
それ以外の年度では、
- 上の子が卒業・扶養から外れる
- 対象は双子2人のみ
といった状態になり、
支援人数が変動する点が特徴です。
無償化が適用された場合の負担額
今回のモデルケースにおいて、
多子世帯の大学無償化を利用した場合の
3人分の大学費用の合計目安は、
合計:約7,350,000円
となります。
無償化といっても、
すべての費用がゼロになるわけではなく、
授業料の上限額を中心に軽減される点には注意が必要です。
制度あり・なしの差額はいくら?
無償化を利用しなかった場合の
大学費用(約13,630,000円)と比較すると、
軽減額(差額):6,280,000円
となります。
これは、
期待していたほどではないと感じる人もいる一方で、
決して小さくない金額差とも言えます。
※ 学費は大学・学部・在学状況により差があります。
双子+下の子世帯と比べるとどう違う?
ここで、
双子+下の子世帯の大学費用シミュレーション結果と、
今回の 上の子+双子世帯を比較してみましょう。
どちらも「きょうだい3人」の家庭ですが、
進学の順番と年齢差によって、
大学無償化の恩恵には明確な差が生まれます。
(※下記の図解では、制度を利用した場合の3人分の大学費用合計を比較しています)

比較して分かるポイント
双子+下の子世帯
→ 扶養3人が揃った状態で双子が同時進学しやすく、
無償化の恩恵を受けられる期間が長い
上の子+双子世帯
→ 上の子が先に卒業・扶養から外れやすく、
3人分の支援が受けられる期間は限定的
この違いが、
最終的に 約140万円の差として表れています。
双子+下の子世帯の詳しいシミュレーションはこちら
双子+下の子(年齢差2歳)のケースについては、
以下の記事で、
- 年表で見る扶養人数の推移
- 無償化が最大限活きる理由
- 制度あり・なしの金額差
を、より詳しく解説しています。
最終的な負担額に差が出る結果となります。
👉[双子+下の子世帯|大学無償化はいくら安くなる?教育費シミュレーション]
よくある勘違いと注意点
3人いる=全員ずっと対象ではない
多子世帯の大学無償化は、
「きょうだいが3人いるかどうか」だけで判断される制度ではありません。
あくまで基準になるのは、
**その年度における「扶養されている子どもの人数」**です。
そのため、
- 上の子が卒業して扶養から外れた
- 就職や年収増加により扶養条件を満たさなくなった
といったタイミングでは、
同じ家庭でも無償化の対象外になる年が生じます。
扶養から外れた年は対象外
大学無償化は、
「過去に対象だったかどうか」ではなく、年度ごとに判定されます。
一度対象になったからといって、
その後も自動的に継続されるわけではありません。
特に上の子+双子世帯では、
- 上の子が卒業・就職
- 扶養人数が2人に減少
という流れになりやすく、
途中で支援対象から外れるケースが多い点に注意が必要です。
アルバイト収入による扶養判定の落とし穴
見落とされがちなのが、
大学生本人のアルバイト収入による扶養判定です。
一般的に、
- 年間収入が一定額を超える
- 親の扶養控除の対象から外れる
と、その年度は
多子世帯の要件を満たさなくなる可能性があります。
「少し働きすぎただけ」で
制度の対象外になってしまうこともあるため、
在学中の収入管理は非常に重要です。
制度は年度ごとに判定される
多子世帯の大学無償化は、
入学時点で一度決まる制度ではありません。
- 扶養人数
- 在学状況
- 所得・収入条件
これらをもとに、
毎年度、改めて対象かどうかが判定されます。
そのため、
長期的な教育費を考える際は、
- 「最大でいくら軽減されそうか」だけでなく
- 「いつ対象外になる可能性があるか」
も含めて見ておくことが大切です。
まとめ(結論を3行で)
上の子+双子世帯は、
「3人いる=ずっと無償化対象」ではなく、対象期間は限定的です。
年齢差や進学タイミングによって、
期待していたほど支援が続かない年が生じやすい点に注意が必要です。
無償化は大きな助けになる一方で、
現実的な条件と期間を把握したうえで教育費計画を立てることが重要です。

